黒き月
蠢きたりて
弾け飛び
華匂い立つ
遥か空
駆け去る光矢
慈雨となれ
姿見ずとも
われ融けて
海と交わり
血を洗い
肩を抱かん
孤独とは
賢き証
その痛みこそ
愛のいしずえ
夜闇とは
明日の在り処
その底にこそ
希望芽吹かん
今回の表現のテーマ
新月=「決意のとき」という解釈を軸に、それがどのような決意なのかを考えます。
- 押し寄せる激動の時代の波を乗り切るために、腹を据えエネルギーを集中する
- 自らが作り上げてきた「殻」をやぶり、これまでに溜め込んだ膨大なエネルギーを放出する体制をつくる
- 心の奥底に隠し持った人々への深い愛情を、静かに社会に染み渡らせる
解釈について
表現するテーマを決めるにあたって月相図から読み取った内容を、以下に整理してみます。
留意事項
- ネイタル図を解釈するときと同じような読み方ではありますが、あくまで「背景」「この時期の空気」として捉えています。
- アングル・ハウスの解釈は考慮していません。
- 今回使用したホロスコープ作成ソフトウェアは「Amateru」です。
基本要素
新月のサインおよび新月とアスペクトをとる天体をクローズアップし、テーマを考えていきます。
蠍座
- 不可視の価値を追い求める
- 情感の共有
- 真実の追及
- 転生・変容
- 力・権威の継承
- 生と死の境界・死線からの生還
蠍座の月
- 選び抜いた相手との一体感を得たい
- 真実だけを見ていたい
- 静けさの中で精神を集中したい
蠍座の太陽
- 巧妙に隠された真実を見極めたい
- 絶望の淵からでも這い上がり生き抜きたい
- 自らが生きる意味を他者の存在をもって証明したい
アスペクトの影響
新月に対するアスペクト
新月のアスペクトとしては、牡羊座天王星とのクインカンクスが成立します。
天王星は「変革」「解放」「閃き」などを示しますので、蠍座新月の象意のなかでもこれらに近い部分が強調されることになります。
新月の起こる位置は蠍座でもすでに終盤の度数であり、内面の世界で蓄積・凝縮してきた濃厚なエネルギーがいよいよ破裂寸前のところまできているようにも思えます。これが天王星のエネルギーを受けることで、衝撃的な自己変革(殻をやぶること)として表面化を促されると考えられます。
しかし、実際にそこに到達するのは楽ではなく、他人にはわからない領域の中で散々右往左往することになるか、外部環境が否応なしに変化を求めてくるかもしれません。蠍座は根底からの変容を示すサインでありながら表面的には変容を拒否し続けるため、極限まで追い詰められないと変容は起こりません。今回アスペクトする天王星は、トリックスターともいえるその性質によって、おそらく常に斜め上の展開を狙ってくると思います。ある程度覚悟が要りそうです。
補助要素
新月のはたらきをサポートする天体に焦点をあててみます。
水星
水星は射手座にあります。数日後に射手座へイングレスする太陽に先駆けて、すでに視線の先を天空へ向けています。
アスペクトは次のとおりです。
- 火星-セクスタイル
- 天王星-トライン
- 海王星-スクエア
射手座の水星は、より高尚な知識や精神性、真理を求めて知性を使います。行動力も旺盛になり、とくにスピードが伸びる印象です。
天秤座の火星・牡羊座の天王星からそれぞれ支援を受けている状態なので、考えるよりも早く、遠い世界の中に何かを見出しているのかもしれません。
一方で、魚座の海王星からも強いエネルギーを受けています。これはもともと高い理想をさらに高くし、憧れを追い求めるあまり、迷いとなって現れる可能性があります。または「的を絞れない」という状態かもしれません。
金星
金星は蠍座にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 木星-コンジャンクション
- 海王星-トライン
- 冥王星-セクスタイル
図の中では海王星-冥王星間に線はないのですが、ごくゆるいセクスタイルが形成できるとみなすと、金星-海王星-冥王星間でかろうじて小三角を生じます。
金星にとって蠍座というサインはデトリメント(障害の座)となりますが、私はデトリメントを「弱い」とは考えていません。それよりは「本来とは違う性質を強く帯びる」ところであると考えます。もしデトリメントが「弱い」とか「力がない」のであれば、たとえば水瓶座生まれの人は全員「太陽が弱い」「太陽の力がない」ことになりますから…。
そんなわけで蠍座の金星は、あふれるような豊かさや華やかさはなくとも、果てしなく深い闇の中でも輝きを失わない、ただひとつの真実をとても大切にする価値観を持つと考えます。そこに蠍座の木星による緊張の緩和と祝福、魚座の海王星がもたらす神秘性の向上や無私の精神、山羊座冥王星の理想社会を築く根源的な欲求と信念が加わり、心の中に沈殿している深い愛をさらに純化し、社会の根底に静かに染み渡らせていく決意を固めるのかもしれません。
火星
火星は天秤座にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 水星-セクスタイル
- 冥王星-スクエア
上の図内には表示されていませんが、牡羊座の天王星とかろうじてオポジションが形成できます。このようにみなせば、火星-冥王星-天王星の3つでTスクエアを生じます。
天秤座の火星は、ものごとや人々の間を調整するためにエネルギーを使います。天秤座というサインは火星自身にとっては「デトリメント」の位置ですが、弱いとは思いません。世界全体の完全なる調和を求めてあちこちに注ぐエネルギー量は結構なものかと思います。ただ、その裏にある自己の本心を置き去りにしすぎると、そのエネルギーは次第に捻じ曲がっていくと思います。
冥王星から過剰なエネルギーを受けている状態なので、「執心しすぎ」「やりすぎ」の傾向がでるかもしれません。また、この火星は神経のかなりの疲弊を伴う可能性があります。
射手座の水星の力を借り、地上ではなく、高次な世界から見える調和の姿を目指すために、自分の理想の軸をしっかり持っておきたいところです。
背景の空気感(木星以遠)
木星
木星は蠍座にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 金星-コンジャンクション
- 海王星-トライン
蠍座入りした木星は、水底に佇む金星を助け、いよいよ海王星と本格的に共鳴し始めます。深層心理の軟化・純化が進みそうなアスペクトかなと思います。
土星
土星は射手座にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 天王星-トライン
山羊座へと向かう土星は、射手座を離れる前に、牡羊座の天王星と再度トラインを形成します。悩みながらも追い続けてきた高遠な理想と、自己の存在意義に対する気づきが調和することで、自律能力が向上し自己の器を広げることに結びつくときと言えるでしょうか。
天王星
天王星は牡羊座にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 新月-クインカンクス
- 水星-トライン
- 土星-トライン
- 冥王星-スクエア
今回はけっこうアスペクトが多い状態です。なかでもやはり、蠍座新月に対してすこし屈折した形で働きかけることが印象的な気がします。
現在牡羊座にある天王星は、独立性や革新意識を強調するような働きをしていますが、これが蠍座新月にかかるということは、「自らがつくりあげた殻を破り、全く新しい自分を確立せよ」というメッセージのような。
海王星
海王星は魚座にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 水星-スクエア
- 金星-トライン
- 木星-トライン
魚座は海王星にとってホームポジションです。近年は可視世界の混沌も激しいですが、それと同じくらい不可視世界の混沌も激しいのかもしれません。霊的な分野に関心が向きやすい人が増えているように感じるのも、その影響なのかもしれません。
無数のいのちが融けあう水の気に満ちた霊性の世界は美しくもありますが、邪心によって濁りが生じるとすぐに視界を遮られて周囲が見えなくなるという恐ろしさもあります。精神を美しく磨いたり、水(感情)を溜めすぎて腐らせないようにすることが大切かもしれません。
おそらくこの位置の金星は、溜めるのが癖だと思いますが、木星や海王星の力を借りて、適度に流れるようにしたいところです。先回の記事にも書きましたが「クレンズ」をモットーに。
冥王星
冥王星は山羊座にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 金星-セクスタイル
- 火星-スクエア
- 天王星-スクエア
火星のところでも触れましたが、牡羊座にある天王星とともにTスクエアを生じるとみなせます。思い描く姿を形にしたい衝動がかなり強まりそうですが、そのエネルギーを思い通りにコントロールするのは難しそうです。
この配置は、新月に対する天王星のクインカンクスとともに、自己変容を成し遂げるまでの苦労を物語るかのようです。