ここでは「ハウスシステム」について、占星術の技術的な内容をおおまかに解説していきます。なお、このページの内容は今後も適宜追記・修正などを行います。
ハウスシステムとは
ハウスシステムとは、ハウスの基準要素と分割方法の種類のことです。ハウスシステムによってそれぞれの要素が異なっています。現在、メジャーからマイナーなものまで併せると、100種類以上のハウスシステムが存在すると言われています。
占星術師によって、採用しているハウスシステムは異なります。自分の採用している理論、使用した感覚、様々な事例の検証結果などを鑑みて選択しています。また、占術の目的によって異なるハウスシステムを使い分ける占星術師も多くいます。
基準となる要素と分割方法
まずは、基準となる要素のちがいについて解説します。
大別すると、「太陽の位置またはイングレス(入宮)サイン」を基準とするもの、「アングル」を基準とするものがあると言われています。
太陽を基準とするもの
太陽にまつわる要素を基準とするものには次のようなものがあります。
ソーラー
ホロスコープを描く日時・地点での太陽の位置をそのまま第1ハウスのカスプとする方式です。太陽の度数=第1ハウスのカスプの度数となります。
例:太陽が♊双子座17°にある場合
第1ハウスのカスプは♊双子座17°になります。
分割方法
第1ハウスのカスプから30°ずつ均等に分割します。
ソーラーサイン
ホロスコープを描く日時・地点での太陽のイングレスサインを基準とする方式です。太陽のイングレスサインの0°=第1ハウスのカスプの度数となります。
例:太陽が♊双子座17°にある場合
第1ハウスのカスプは♊双子座0°になります。
分割方法
サインの境界線がそのままハウスの境界線になります。
ソーラーサインシステムの使用場面・所感など
ソーラーサインは、対象者の出生時間がわからない場合に用いられることが多いハウスシステムです。管理人が使用した所感としては、事実としてあらわれる現象よりも、本人にしかわからないような「対象者の意識世界」が示される傾向が見受けられます。
ASC(アセンダント)を基準とするもの
アングルのうちASC(アセンダント・地平線と黄道の東側の交点)を基準とする代表的なハウスシステムを次に記載します。
イコール
ASC(アセンダント)を第1ハウスのカスプとするものです。なお、イコールにはMC(正中点)を基準とする方式もあります。
例:ASCが♏蠍座25°にある場合
第1ハウスのカスプは♏蠍座25°になります。
分割方法
第1ハウスのカスプから30°ずつ均等に分割します。
ホールサイン
ASC(アセンダント)が存在するサインの0°を第1ハウスのカスプとするものです。
例:ASCが♏蠍座25°にある場合
第1ハウスのカスプは♏蠍座0°になります。
分割方法
サインの境界線がそのままハウスの境界線になります。
豆知識
イコールやホールサインは、大変古いハウスシステムだと言われています。イコールハウスシステムは現在もイギリスなどではよく用いられるそうです。
2つの基準を使用するもの
地球上に存在する2つの基準を使用して全体を4つに分割してから、最終的に12のハウスに分割する方法を「クオドラント方式」と言います。現在主流になっている多くのハウスシステムはこのクオドラント方式です。
この方式では、2つの基準に挟まれた空間をさらに「時間」で分割する方法と「空間」で分割する方法などに分かれます。
クオドラント方式の場合、ASC(アセンダント)が第1ハウスのカスプとなり、MC(正中点)が第10ハウスのカスプとなります。
「時間」で分割する方法
「時間で分割する」とは、地球の自転や公転に由来する太陽の移動距離とおおまかに考えればよいです。
代表的なものは、黄道上にある次の2つの要素を基準としてハウスを12分割していきます。個人の心理特性や人生のシナリオなどを読み取ることに適していると言われています。
- ASC(地平線と黄道の東側の交点)とDES(地平線と黄道の西側の交点)を通る線
- MC(正中点)とIC(正中点の正反対の点)を通る線(=子午線と一致します)
時間分割型のハウスシステムの代表的なものを次に記載します。
プラシーダス
現在の日本でよく使用されている方法です。時間経過による太陽の移動を割とリアルに追求しようとしているためか、高緯度の地点ではハウスごとの広さの差異がかなり偏るという特徴があります。
コッホ
プラシーダスシステムの問題点を改良して生まれたもので、こちらを好んで使用する方も多くいます。しかし、極地に近づきすぎるとプラシーダスと同じような状態に。
「空間」で分割する方法
こちらは時間経過による分割ではなく、物理的に空間を12個に分割する方法です。マンデーンなど世相を見るもの、ホラリーなど具象的な問題解決などに適していると言われています。
空間分割型のハウスシステムの代表的な物を次に記載します。
キャンパナス
キャンパナスでは、次の2つの要素を基準としています。
- ASC(地平線と黄道の東側の交点)とDES(地平線と黄道の西側の交点)を通る線
- 卯酉線
※卯酉線とは、子午線に対して垂直に交わる天球上の真東・真西を通る架空の線です。この線は地平線と必ずしも一致しません。
キャンパナスでは、卯酉線を12等分したものを黄道に反映させてハウスの区切りとしています。キャンパナスハウスシステムの最大の特徴は、「ハウスの境界線がカスプと一致しない」ということです。キャンパナスでは、カスプはハウスの中央にきます。これは、ASCやMCなどのアングルも各ハウスの中央にくるということです。
レギオモンタナス
もともとのレギオモンタナスでは、次の2つの要素を基準としています。
- ASC(地平線と黄道の東側の交点)とDES(地平線と黄道の西側の交点)を通る線
- 天の赤道
※天の赤道とは、地球の赤道をそのまま天球に拡大したものです。
現在のレギオモンタナスでは、次の2つの要素を基準としています。
- ASC(地平線と黄道の東側の交点)とDES(地平線と黄道の西側の交点)を通る線
- 卯酉線
現在のレギオモンタナスは、基準がキャンパナスと同じになっています。したがってキャンパナスとの違いは、カスプがハウスの境界であるという点のみになります。
ポルフュリオス(ポーフィリー)
ポルフュリオスでは、次の2つの要素を基準としています。
- ASC(地平線と黄道の東側の交点)とDES(地平線と黄道の西側の交点)を通る線
- MC(正中点)とIC(正中点の正反対の点)を通る線(=子午線と一致します)
プラシーダスやコッホと同じようにアングルを基準としていますが、各アングルの間を物理的に3等分しているハウスシステムです。アングルさえわかればあとは3等分するだけ ということで単純明快、わかりやすいです。使用事例がほとんどないので精度などは未知数です。機会があればトライするかもしれません。
ハウスシステムは「完成」していない
世界に多数のハウスシステムがあるのは、完全な理論として使用できるハウスシステムがまだ見出されていないから と言われています。しかし、個人の資質や人生のテーマを見るのにプラシーダスやコッホが適していて、具象的な問題解決を見るのにはキャンパナスやレギオモンタナスが適している というように、目的によって適切なハウスシステムが異なるという考え方も容認されてよいのでは?と私は思います。
占星術は常に人類と共に進化していきますので、今後またさらに多くの研究が進めば、そのうちこのあたりの答えも何かしら出てくるのではないでしょうか。
どのハウスシステムを使用するか?
上記のとおり、ハウスシステムは完成していません。研究を続けるつもりで、自らの理論・占断の目的に最適なハウスシステムを選んでいけばよいでしょう。