「占い」というものにどのような意義を見出すかは人それぞれですが、ふと「自分で占えるようになることにどんな意義があるのか?」を考えてみました。今日はこれをテーマに書いてみようと思います。
リーティングでわかる主なこと
まずは、セルフかどうかを問わず(西洋占星術を使用した)リーティングでわかる主なことを書き出してみます。
なお、これは私が考える要素であり、他の占術家が皆さん同様に考えているとは限りません。
1.自己の性質の理解
自分という人格のベースを知るのにはとても効果的です。心理傾向や行動原理、適性など、様々な要素を知ることができます。
自己のベースを理解するのに役立つのは、西洋占星術の場合「ネイタルチャート」です。人は、生まれた時に刻印された天空の配置を一生持ち続けて生きますので、長く付き合う自己をより深く多面的に理解しておくと、人生の航海に役立ちます。
2.内観のヒント
1.をベースに自己理解が進んでくると、時節の影響を受けたチャートを組み合わせることによって、その時の自分の成長テーマや心境を知ることができます。
西洋占星術では、ネイタルチャートを年齢分進行させて仮想的に作成する「プログレスチャート」や、ある時点での天空配置をそのまま写しとった「トランジットチャート」を用いて組み合わせることで、その時の自分を知るヒントを得ることができます。
3.過去の理由の解明
1.や2.を繰り返しながら、自分の人生を辿っていると、自分の置かれた境遇やこれまでの自分の身にふりかかったたくさんの出来事の意味が、突然わかったりすることがあります。
たとえば、それまでは理不尽だとしか捉えられなかった過去を受け入れられると、人はそれまでに負った内面的な痛みを、それ以降の人生を生きるための力に変換することができたりします。それは自らの意志を自分で立たせる力であったり、推進・跳躍する力であったりします。
4.将来設定の動機
将来のビジョンを作ったり、向かうべき先を決めるタイミングは、人によって様々です。人生のとても早いうちにそれを行う人もいれば、晩年に差し掛かってから突然決まる人もいます。
1〜3までのプロセスが、将来設定の動機になることがあったりします。
もちろん、1からここまでのプロセスが順番どおりに進む必要はありません。最初に将来を設定してみてから1〜3を順不同にたどることもたくさんあります。
5.存在意義の肯定
これについては、ここではあまり深く書かないことにします。ただ、このプロセスが達成できたなら、占術家冥利に尽きるなあ と思っています。
セルフリーディング特有の意義
では、ここからは、他者に頼らず自らの力だけでリーディングすることにはどんな意味があるのか?を考えてみようと思います。
1.即実行できる
占術家という他者に頼らなくても良いということは、その都合に一切左右されないということです。セッションの予約をとってそれを受けるとか、メールを出して返事を待つというタイムラグがなく、自分の都合をつければいつでも実行できるという強みがあります。
2.永遠にできる
「気が済むまで」やり続けるとか、そういったことができます。一旦中断してまた別のタイミングで再開するとか、気が向いた時にはじめるとか。
3.検証しやすい・検証に向いている
時間や頻度の制約がなく、対象が常に自分であるので、リーディング結果と現実を照合して確かめやすい状況が揃います。
4.思考と感情の整理整頓力をつける
セルフリーディングに欠かせない要素に「客観視」があると思います。たとえ占術の知識や技術があったとしても、これができなければ解釈や評価を誤るので、何の意味もありません。
しかし客観視は、言葉で表すのは簡単ですが、実際には結構難しいものだと思います。感情はまだわかりやすく分離できるかもしれません。意外に思考の方が、完全な分離に苦労するのではないでしょうか。
思考と感情の整理整頓が自分の中でうまくできるようになると、精神を安定した状態に保ちやすくなり、取り乱したり不安に駆られることが減ると思います。これは自分の人格を適切に扱えることにもなりますが、他者に対する理解力を養うことにもつながります。
セルフリーディングでは困難なこと
セルフリーディングでは得られないこと、実現しにくいことなども書いておこうと思います。また、解決方法も一緒に書いてみます。
1.正確性の担保
占術というのは基本的に「象徴解釈」であり、その象徴から何を読み取るかということは、占術家自身が選びとる必要があります。何を見出し選び取るかには正解が存在しません。これは、象徴というものが単体では機能せず、他の象徴との関連や現実との照応が絶対的に必要であるからです。
また、思考と感情の整理にも関係することですが、人間というもの、なかなか完全に客観的にはなれません。
他者のことはわかっても自分のことが正確にはわからないもので、「(自分に対する)自分の解釈が正しいか?」ということは、結構術者を悩ませます。結局これは、客観性が発達してくると今度は「主観の欠片」の残存を警戒するようになるためです。
解決方法
リーディングの経験を増やしたり、他者の解釈を参考にしたりすることがよいと思います。知見を増やしていくと、解釈の引き出しが増えます。さらに、これらの繰り返しによって「主観の欠片」を取り除きやすくなります。
2.解釈力の健全な発展
どうしても自分の価値観(世界観)や、これまでに遭遇してきた事象がベースになるため、普段から意識しておかないと解釈の発展に偏りが生じがちです。
解決方法
世界中のいたるところに、多様な世界があることを実感できる体験が必要になります。あらゆる見聞の結果として「実感」できるかどうかがポイントになると考えます。実感に至らない限り意味を為しません。
3.アウトプット(言語化・図式化)
自分の内面のみで成立してしまうために、意識的にアウトプットの機会を作らない限りは、この能力が鍛えられません。
解決方法
これは単純に、様々な方法で実行するより他にありません。
アウトプットの際、いきなりまとまった言語にするのは難しいです。まずは単語や文節を書き出してみましょう。シンボルや図解などを併用してみるのも効果的です。
自分なりの言語でもよいのですが、アウトプット先の媒体としてBlogなど他者が目にするものを選んでいる場合は、できるだけ他者にも問題なく通じる表現・表記を目指した方がよいと個人的には思います。文章構造や文法などの知識が役に立ちます。また、できるだけ感情を排した表現方法も、他者にとっては理解の助けになります。
セルフリーディングはオススメか?
最後に、セルフリーディングがオススメかどうかを書いてみようと思います。
「みんなにオススメ」というわけじゃない
「興味があるならば」おすすめしたいなと思います。しかし私は「(世の中の)みんなが(占星術を)知ればいいのに」とは微塵も思っていません。
そう思う人は、(占星術を)の部分を他の学問に置き換えてみるとよいでしょう。例えばこれを「数学」にしてみたり「歴史学」にしてみたり「物理学」にしてみたり…。これら例えに出したものは、学校教育に含まれている学問ですが、果たしてその教育を受けた人にとってどの程度の意味を為しているでしょうか?
そんなわけで、繰り返しになってしまいますが、私は(ここでは占術による)セルフリーティングを全世界の皆さんにおすすめしたいと思うことは一生ありません。
オススメしたいことは
しかし、自己の中に客観性を養い、自己理解や内観を進めることそのものはおすすめしたいなと思います。
自己と他者の関わりの中で自己を知ることができ、他者を知ることができ、多様な社会と世界を知ることができ、そこからまた改めて自己を知ることができます。この繰り返しによって人格は成長・成熟していき、そしてその重なりが増えることによってしか、社会と世界は成長しないからです。