冥界から完全に抜けるまで、出口だけをみて進み続ける。
決して後ろを振り返ってはならない。
それが例えあと一歩のところでも。
思いつきの経緯など
ギリシャ神話の「オルペウスの冥府下り」や、日本神話の「黄泉国の訪問」は、それまでの古い人生から新しい人生への転換期に体験するプロセスの、ひとつのモデルなのかもしれないと突然思い至った。
- 新しい人生を歩むフェーズに入る人を、まだ本人の中に残っている古い思考や感覚などがそれまでの人生パターンへと引き戻そうとする。しかし本人はまだ、それまでそこにあったものを手放さなければならない理由を知らず、ごく自然に自ら戻されることを望む。
- 古いものを振り払おうとしても「それがない世界」を生きたことがないためだったり、できればその古いものを失わずに済んだ方が損失が少ないために、保持し続けようと望む。
しかし、振り向いてはならない。
神話の中では「振り向くことによって過去を失う」描写であるが、実際の人生においては「振り向くことによって過去に引き戻される」。
これは、それぞれの神話の中で「過去を失う」のが「生の世界へ帰る側（オルペウス/イザナギ）」で、「過去に引き戻される」のが「死の世界へ帰る側（エウリュディケー/イザナミ）」とされていて、基本的に「生の世界へ帰る側」が主体とされているため。実際にはこれらはすべて、一人の人の精神の象徴である。
過去と未来は分離され、過去は死ぬ。その時自分がどちらを選ぶかによって、その後の人生と、その中で生きる自らが「生きたもの」になるか「死んだもの」になるかが決まるのである。
参考
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