あてなどなくても
道などなくても
ただ風の行方を
我らも往くだけ
森の外は霧満ちた夜
揺れる切れ間から仰ぎ見た
天で喘ぐ虫の息を
人は希望と呼んでいる
偽りの進化が描いた
神の想像図を
どんなに讃え崇めても
それはただの拘束具
人よ 彷徨い悩むがいい
それは進化のための才である
人よ 苦しくとももがき生きよ
そこは穢れをすすぐ海である
今回の表現のテーマ
新月=「決意のとき」という解釈を軸に、それがどのような決意なのかを考えます。
- 既存の閉じた価値観のなかで守られる生き方を辞め、希望と恐怖に満ちた外界へ流れ出る
- 善なる理想の実現を夢見て、自らを縛りつけもがきながら、新時代へ溶け込む糸口を探す
解釈について
表現するテーマを決めるにあたって月相図から読み取った内容を、以下に整理してみます。
チャートの主体
「国家の基盤である民衆の根源的欲求の集合体」と考えることとします。
留意事項
- ネイタルを読み解くような解釈の中にマンデーンのおおまかな解釈を取り入れ、「時代背景」「情勢」として考えていきます。
- アングル・ハウスについては、「日本/東京」での観測値を採用します。
- 今回使用したホロスコープ作成ソフトウェアは「Amateru」です。
背景に漂う空気感
人々は、それまで慣れ親しんだ拠点・価値の置き場などから離れる決心がつき、新たな刺激やよりよい世界を求めて流転をはじめようとしています。この激動の時代の中、永遠に変わらずその場に存在し続ける絶対的な価値はもはや存在しないということを察知し、何かにしがみついていれば生きられる世の中が本当に少しずつ終わっていっているのだという実感が、日に日に増していくからなのかもしれません。
では自分自身にとって、また多くの人々にとってよりよい社会とは何なのか?という答えを求めて動き出した結果、強い正義感と善性を追求することになり、その結果自らや社会を厳しく律するあまり、不自然に束縛する結果になりうる可能性が考えられます。
歩き始めたばかりの人々は、より美しい状態を目指そうとするとき、まず自らが知りうるものの中から目標を見つけ出そうとしてしまうため、既存の窮屈な価値観の中に埋もれてしまう危険性があります。ただ、時代はすでにそれを求めてはいないので、新しい視点で探しなおすことを人々に促す出来事が追々やってくるでしょう。
根拠とした要素
アングル(ASC・MC)が指し示すサビアンシンボルと、それに対するアスペクトから考えています。
ASC(集合的エネルギーの出発点)
♊双子座26°「彼女の部族がキャンプしている森から出現する流浪の民」
サインの基本概念とサビアンシンボルの象意
双子座は、「思考」「意思疎通」「伝播」などを意味するサインです。絶え間ない変化を基本性質とし、停滞は双子座にとって死と同義です。
また双子の名のとおりあらゆる二面性の存在を示唆し、分離と統合およびその到達までの葛藤をテーマとするサインでもあります。この二面性とは、たとえば「真と偽」「実と虚」「善と悪」「正と誤」などの極めて根源的なものです。
このシンボルは、慣れ親しんだ環境から別離し、新しい世界を求めて流転する道を自ら選ぶ様子を示しています。この段階ではすでに、既存の環境にとどまり続けるかどうかという迷いに対して答えを出し終えています。そして、その結論に到達するまでのあらゆる葛藤は、すべて風の中に流してしまったのです。
成立しているアスペクト
- 新月-コンジャンクション
- 水星-コンジャンクション
- 天王星-セクスタイル
それまで慣れ親しんできた世界を離れなければならないことは、万人にとっての歓びではないでしょう。しかし、人は変化を嫌い拒絶しながら、一方で変化を待ち望んでもいます。不思議ですし、まどろっこしいことですけれど。今一度、自分にも問いかけてみてもよいかもしれません。果たして自分は変化したいのか?そうではないのか?
ひとつひとつ時間が過ぎていくたびに新しい図を読むのですが、全体的にはどんより重い空気がはびこっているこんな時代でも、小さな時の移ろいの中で、時代を動かすための風が吹こうとしているタイミングはいくつもあるのだなと考えさせられます。今回の月相図で示されている流転を求める空気感は、たとえセンセーショナルな表れ方ではなくても、これから先の時間の中に少しずつ溶けて、染み渡っていくのでしょう。
ASCルーラー(支配星)の状況
今回のASCの支配星は水星です。水星は♋蟹座・第1ハウスに位置しています。
成立しているアスペクト
- ASC-コンジャンクション
- 水星・土星・天王星・MC-クレイドル
「クレイドル(cradle)」とは「揺りかご」という意味を持つ単語です。人々の心情の揺れに鋭敏に反応しつつも、感情に振り回されないように精神をある程度固定しながら周囲を見渡し、向かうべきところに向かおうとするエネルギーに換わっていきそうです。
MC(集合的エネルギーが向かう先)
♓魚座5°「正装した軍隊の将校たちの行進」
サインの基本概念とサビアンシンボルの象意
魚座の象意には人間離れしたものが多く、中でも崇高な精神性を意味するものが目立ちます。そのため支配星である海王星と共に、”いわゆるスピリチュアリスト”に非常に好まれやすいサインです。好まれやすい象意をピックアップすると、たとえば「夢」「魂」「神秘」「信仰」「浄化」といったものがあります。一方で、「幻」「混沌」「依存」「堕落」「崩壊」といったものもあり、これらは表裏一体です。
魚座の力を理想的に使用するには、極限まで清められた精神と、全ての者の進化を願う心が必要不可欠です。これらがないままに魚座の力を使用しても、それまでに積み上げられた進化への礎がすべて崩れ去り、宇宙の塵へと帰すだけです。
このシンボルでは、魚座の象意のうち「奉仕」「崇高さ」「同化願望」などが表れています。自らを現実社会に適応させるために厳しい規律にあえて従い、世間的に「聖職」あるいは「善」とされる役割に従事することで、世の中と人々の中に受け入れられたいという願望を示します。一方で、強い正義感や奉仕意識があるものの、盲目的な状態でこの性質のみが生きてしまうと非常に危険でもあります。この点において、私は今回の表示を少し危惧しています。盲目の正義は、往々にして人の精神に狂乱をもたらし、惨劇を生むことがあるからです。
成立しているアスペクト
- 水星・土星・天王星・MC-クレイドル
- 冥王星-セミスクエア
ASCルーラーのセクションでも今回のMCを含んだクレイドルについて触れましたが、「向かうべきところに向かうエネルギー」に穏やかに変わって行くことは想像できます。その「向かうべきところ」を人々の総意としてどのように判断することになるのかを注目していきたいところです。
セミスクエアを形成する冥王星からは、現在の社会からの歪んだ圧力を幾分感じますが、一方で土星・天王星が穏やかに関わっていますから、個人的には、人間的な理知を失わない賢明な選択であることに期待したいと思っています。
MCルーラー(支配星)の状況
今回のMCの支配星は海王星です。海王星は♓魚座・第10ハウスに位置しています。
成立しているアスペクト
- 新月-スクエア
- 金星-セスキコードレート
- 木星-トライン
- 天王星-セミスクエア
- 冥王星-セクスタイル
海王星はMCと同じサインの中にあり、第10ハウスを完全に支配しています。この海王星とスクエアを形成する新月も第12ハウスというきわめて不透明なハウスにあり、政局そのものが混沌としそうです。あるいは、この時期政府は諸々の問題に対する対応方針を全く明らかにしない(あるいはできない)可能性が考えられます。
海王星自身も今回は多くの天体とアスペクトを形成しており、方々への影響力が強いことが示されています。
社会の基本的な動向
今回の新月の要素と成立しているアスペクトから、基本的な動向を考えます。
考えられるこの時期の状況
今回の政治的なステージは「不可視分野」であると示されています。この不可視分野とは、たとえば陰謀・テロなどといったとても現実味の感じられないものを指します。得体の知れない恐怖に脅かされる感覚を植えつけられるようなニュースや事件などが、世の中に現れる可能性が高いことを示しています。新月の影響は実際の新月よりも早く表れることがあると言われますが、昨日早速この分野に該当する悲しい事件が起きてしまいました。
しかし、この時期の不可視分野のニュースは、比較的顕在化しやすいようにも思えます。本当に水面下で音もなく恐ろしい物事が動くよりはましなのかもしれません。なぜなら、そこに対して常に警戒心を持つことができるからです。たとえどのような規模のものであっても、陰謀を阻止するための最大の武器はまず「気づくこと」です。そして、誰かが気づいたことが広く知れ渡ることです。陰謀とは隠されていてこそ陰謀なのです。
社会の中に生きる個人のスタンス
一時的に思考の方向性がわからなくなり、混乱が強まる可能性が考えられます。そんな中で大いに迷い、様々な方向に流され、数多くの過剰な刺激に神経をピリピリさせられながらも、多くの人々が内面に抱えているメッセージを何らかの形で感じ取り、それを世の中に伝播させる役割を果たす人が出てくるのではないかと思います。
根拠とした要素
新月のサインおよび新月とアスペクトをとる天体との関係から考えています。
新月のサインとハウス
今回の新月は「♊双子座・第12ハウス」に位置しています。
サインの基本的な概念
双子座は「思考」を司るサインです。また、「言語」「意思疎通」「友人」なども示します。自分以外の存在をはっきりと認識し、それらと積極的に関わりながら自らの世界を拡張する欲求を象徴します。この過程の中で思い悩み、自らの選択に対して大いに迷うことになりますが、悩む・迷うということは、人としての新しい才能の芽生えでもあります。
世界を知れば知るほど全ての存在は分離していくように感じられ、心の奥底に封じ込めた「繋がりたい」欲求とは相反していくことも多くあります。欠乏感や孤独感に苛まれるたびに、本来の欲求とは裏腹に人々との繋がりや自らの想いを薄めてしまうというプロセスを経験することもあるでしょう。しかし、あてどなく風の中を漂いながらも多くの試練を乗り越え、世界の人々と自らを軽やかに繋ぎなおすことこそが、双子座の持つ使命のひとつでもあります。
♊双子座の月(第12ハウス)
一般的な解釈では、次のようなことを示します。
- 誰も知らない密かな世界の中で空想や言葉遊びをしたい欲求
- あらゆる刺激に反応し絶えず移ろう気分の変化を人知れず隠している、あるいは自覚できない
- あらゆる人々と交流し繋がりたい欲求が果てしなく広がり続ける
♊双子座の太陽(第12ハウス)
一般的な解釈では、次のようなことを示します。
- 精神世界を果てしなく探求する
- 多くの人にとっての「心のメッセンジャー」となる
- 闇の中を漂うメッセージに形を与え広く世の中に伝播し、あらゆる人々を繋ぎなおす
成立しているアスペクト
今回の新月に対するアスペクトは次のとおりです。
- ASC-コンジャンクション
- 火星-セスキコードレート
- 海王星-スクエア
補助要素
新月のはたらきをサポートする天体に焦点をあててみます。
金星
金星は♋蟹座・第2ハウスに位置しています。アスペクトは次のとおりです。
- 天王星-スクエア
- 海王星-セスキコードレート
国内の景気を示す第2ハウスに金星が位置していて、この分野に何らかの華やかなニュースをもたらしそうに思えます。しかしよく見ると天王星とはスクエアが形成されていますので、ちょっとしたハプニングの様相を帯びたものになりそうな予感がします。
火星
火星は♒水瓶座・第8ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 新月-セスキコードレート
- 木星-スクエア
- 土星-セミセクスタイル
- 天王星-スクエア
火星は海外経済を示す第8ハウスにあり、色々な天体に対して緊張感のあるアスペクトばかりを形成しています。気になるのはやはり♉牡牛座天王星とのスクエア。株の乱高下などがあるのかもしれません。そうすると、第2ハウスに位置している金星にも大きく影響してきそうです。
木星
木星は♏蠍座・第5ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 火星-スクエア
- 海王星-トライン
この木星は、第10ハウスにある海王星とトラインを形成します。良い方向に働けばいいのですが期待できるかどうか…。
望ましくない方向であれば、たとえばスポーツや芸能関連のニュースなどが連日頻繁かつ過剰に報道されることで、政局の不祥事に世間の目線がいかないよう、視点をぼやけさせる働きとして使われる可能性はあるでしょう。
土星
土星は♑山羊座・第7ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 土星・水星・天王星・MC-クレイドル
- 火星-セミセクスタイル
今回のASCルーラーである水星やMCを絡めたクレイドルを形成する土星は、ゆりかごの最も緊張した部分のピースになっています。外交方面のニュースはもしかすると重いものまたは進展が感じられないものが中心になるかもしれませんが、それは同時に、人々に世界を正しく見つめなおす冷静さを呼び戻す役割を担う意味もあるかもしれません。
天王星
天王星は♉牡牛座・第11ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 天王星・水星・土星・MC-クレイドル
- 金星-スクエア
- 火星-スクエア
- 海王星-セミスクエア
- ASC-セクスタイル
月相図を読んでいて毎回思うのが、天王星が絡むアスペクトが毎回多いということ。センセーショナルで目立つエネルギーを持つ天王星は、なんだか毎回あらゆる手段を用いて人々の関心を世の中に向けさせようとしているかのように見えてきます。人々は目覚めなければならないのでしょう。しかし、天王星は決して穏やかではないので、起こされる側の人はいろいろと面喰って大変だと思いますが…。
冥王星
冥王星は♑山羊座・第8ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 海王星-セクスタイル
- MC-セミスクエア
冥王星は第8ハウスのカスプ上に乗るような形になりました。今回は第6ハウスの支配星となっていますので、海外経済の状態の辛辣な変化により、国内の労働市場あるいは食糧関係の問題などの分野に何らかの影響が生じる可能性が考えられます。これは例えば、アメリカの新たな貿易政策による関税の上昇の影響を指しているかもしれません。