闇の中で息を殺すことも
時には生き延びるために必要なこと
でも生き抜いて何をしたいのかを
見失うことは決してないように
平穏の仮面の下の眩い反旗を
蔑み腐らせることは決してないように
すべての怒りや嘆きたちの根が
悲しみであることを知ることができたら
その悲しみの根が愛と歓びだと
いつか気づくときが来るのでしょう
そのとき人は自らを天地の軸によって貫き
魂を震わす歌声を思い出すのでしょう
今回の表現のテーマ
新月=「決意のとき」という解釈を軸に、それがどのような決意なのかを考えます。
- 平常心の維持・反抗心の噴出・悲しみの流出の狭間で悶える
- その激しい葛藤の根源は、人としてのシンプルな親愛の共有への願いだと知る
- 親愛の共有への希求の念を心の軸とし、願いを歌という形に昇華して表現する
解釈について
表現するテーマを決めるにあたって月相図から読み取った内容を、以下に整理してみます。
チャートの主体
「国家の基盤である民衆の根源的欲求の集合体」と考えています。
留意事項
- ネイタルを読み解くような解釈の中にマンデーンのおおまかな解釈を取り入れ、「時代背景」「情勢」として考えています。
- アングル・ハウスについては、「日本/東京」での観測値を採用しています。
- 今回使用したホロスコープ作成ソフトウェアは「Amateru」です。
背景に漂う空気感
常に混沌とした社会の中。暗い事件や現象ばかりが世間にあふれていて、先の見通しもわからない。加えて最近では本当に大規模な災害まで起こってしまい、傷つくばかりの国土と人々の嘆きと苛立ちで、空気が埋め尽くされています。
人々はずっと押し黙ってきました。何が正しく、これからの未来を切り開くために何を求めるべきか見極める力がないとばかり思うからでしょう。しかし、日に日に荒廃していく社会と日常のなかで途方にくれ、世の中に物申すだけの力を持つには自分は程遠すぎるとばかり感じてしまい、自らに対する諦めと失望を上積みするばかり。そして余計にすべてに嫌気が差し、きらびやかな憧れや束の間の楽しさを見せてくれる場所に逃避することで、なんとか正気を保とうとしているようです。わかっていても、それに浸って正気を保たねばならないほど、人心は疲労しています。その様を腐敗と呼ぶ人もいるでしょう。しかし結局のところ、そのような人も同様に疲労しています。
人々は代弁者あるいは扇動者を待っているように思います。ただ、それは歪んだ理論と戦うために弁論という形を用いる人ではなく、言葉にならない想い、つまり感情を歌という形で表現してくれるような人のようです。
もしそのような人が現れるならば、個人的には、扇動者よりは代弁者を求めたほうがよいように思います。ただ、この国の人々を動かすのに適しているのはどう見ても扇動者ですので、両方の適性を持った人が現れるのが一番良いでしょう。
根拠とした要素
アングル(ASC・MC)が指し示すサビアンシンボルと、それに対するアスペクトから考えています。
ASC(集合的エネルギーの出発点)
♎天秤座18°「泥棒の一味が隠れている」
サインの基本概念とサビアンシンボルの象意
天秤座は、「調和」「調整」「秩序」「完成された美」「均衡」「客観」「中庸」などを示すサインです。
ある物事や関係性の中にある「中点」を見つけ出そうとするとき、自分が認識できる世界が狭いと、中点だと思って選択した箇所は必ずずれていますし、バランスを整えるために行動したとしても、結局は新たなゆがみしか生み出せません。だからこそ天秤座の力を持つ人は、限りなく広大な視野を持つ必要があり、またその中から中点を見出す能力を獲得するまでに揺らぎ続ける宿命にあります。「悩む才能を与えられた人」ともいえるかもしれません。あらゆる物事を見たり感じたりしながらそれらの実態を知り、自己の中に純度の高いクリーンな価値基準を構築することで成長します。そして最後に、すべての均衡が成り立つ「中点」を見つけるのです。
このシンボルは、そんな天秤座の象意のうち「中庸」と「正義」について大きな問いを投げかけています。とくに、「誰かの意図のもとに作り出された正義」の空しさや危険性と向き合い、その虚構を受け入れることの大切さを訴えようとしているように思います。
「泥棒」という単語を聞くと、多くの人はほとんど反射的に「悪い人間」という判断をしますが、ここでの「泥棒」とは反社会性のひとつの象徴です。「その時点での社会」にとって反社会的とされる存在や思念は、常に社会のどこかに存在しており、また一人ひとりの心の中にも多かれ少なかれ内在しています。この反抗心が育って芽が出てきた時、「その時点での社会」を大きく変化させていく革命の先駆けとなることがあるのです。つまり、このシンボルで示されている「泥棒」とは、レジスタンス集団を指しています。
反抗心とは本来、正当な自我欲求を認められず、不当な理由で抑圧された時にそこから脱却するための衝動として生まれるものです。不当な状況から脱却したい、あるいは抑圧され続けて息苦しい現状を改善したいという、自立心によって呼び起される心情のことを指すのです。これは極めて正常なものですが、極端な反社会的行動に結びつくほど大きくなってしまうことも多々あるのは確かです。しかし、あらゆる心情は肥大化しすぎると必ず大きな問題を引き起こします。反抗心に限ったことではありません。
このシンボルから学ぶべきことは2つだと思います。
ひとつは、「正義」とは決してすべてが漂白された世界を目指すことではなく、この混沌とした世界の全ての色が共存し、どうやったら真に調和できるかを真剣に考え、悩みながらその中点を探すことだ と知ることです。
もうひとつは、その調和のために自己の自立心を抹殺してはならない ということです。自らもまた、混沌とした世界の無限の色のひとつだということを決して忘れてはなりません。
成立しているアスペクト
- ASC・新月・冥王星-Tスクエア
- 水星-セクスタイル
- 金星-セミスクエア
MC上の新月と、IC上の冥王星が関わり、かなりタイトなTスクエアを形成しています。もしかすると、これまで人々の中に内在していた現在の社会に対する反抗心が、急に何らかの形で噴出するような出来事につながるかもしれません。あるいは、いつか巡ってくるその時に向けて、よりエネルギーを凝縮させるフェーズとして機能することになるでしょう。
ASCルーラー(支配星)の状況
今回のASCの支配星は金星です。金星は♍乙女座・第11ハウスに位置しています。
成立しているアスペクト
- 金星・土星・天王星-グランドトライン(地)
- 冥王星-セスキコードレート
- ASC-セミスクエア
この時期、世間からの風当たりが少し厳しくなると予想される政権に対し、議会側は安定感がでてきて攻勢を強める可能性が考えられます。多少は実のある議論が展開されそうな雰囲気です。現政権に対して議会がどの程度抵抗できるかはわかりませんが、動きを見守りたいと思います。
MC(集合的エネルギーが向かう先)
♋蟹座20°「オペラを歌うことによって、有名な歌手が自分の名人芸を証明する」
サインの基本概念とサビアンシンボルの象意
蟹座は「礎」または「礎となる環境」を示すサインです。これは例えば、物理面では「家族」「家系」「血族」であったり、「故郷」などを意味します。精神面では「身内意識を抱く人」「テリトリー」「防護壁」「拠り所」「依り代・聖域」「結界」などを意味します。また、支配星の月と共に「母性的な愛情」「共感性」も意味します。
このシンボルでは、蟹座の象意のうち「母性的な愛情」と「共感性」が強調されています。万感の想いを美しい歌に乗せて人々の心を揺り動かし、共にその感動を味わう。歌に乗せられた想いとは、優しさ、悲しみ、憎しみや空しさなどのあらゆる心の色でしょうか。あるいは人類が永遠にたどり着けないような理想的な平和な世界への希求でしょうか。
成立しているアスペクト
- MC+新月・木星・海王星-グランドトライン(水)
- MC+新月・冥王星-オポジション
水のグランドトラインが形成されています。ぱっと見た感じ、政権はまだまだ安定してる様子を維持しながら進むのではないかと考えられます。しかし、もしかすると逆に「緩み」の暗示なのかも?とも。
一方で冥王星による強烈な威圧感・緊迫感も気になります。冥王星はIC上ですので、国民や国土の奥深くに潜む見えない感情が、施政者の姿勢に対して明確に対立しようとしている図式にも思えてしまいます。
MCルーラー(支配星)の状況
今回のMCの支配星は月です。月は♋蟹座・MC上に位置しています。解釈は次項「社会の基本的な動向」の冒頭を参照ください。
社会の基本的な動向
今回の新月の要素と成立しているアスペクトから、基本的な動向を考えます。
考えられるこの時期の状況
社会的な場面において、情感あふれる人々とのふれあいによって心の安らぎを求めようとすることと、激しい革命への欲求がない交ぜになったような大衆心理の衝突が表に出やすいのではないかと予想します。
根拠とした要素
新月のサインおよび新月とアスペクトをとる天体との関係から考えています。
新月のサインとハウス
今回の新月は「♋蟹座・MC上」に位置しています。
サインの基本的な概念
今回の場合は、MCの解釈でも触れたとおり「共感性」が強調されているように思います。蟹座のエレメントは「水」。またクオリティは「活動(=始源)」です。私は蟹座に対して、「原初の水」たる雨や湧水のイメージを持っています。まさに心の中に湧き出す豊かな感情を象徴するサインです。
♋蟹座の月(第10ハウス) ※MC上のため第10ハウスとみなします
一般的な解釈では、次のようなことを示します。
- 社会という硬質なフィールドに豊かな感情をあふれさせたいという欲求
♋蟹座の太陽(第10ハウス) ※MC上のため第10ハウスとみなします
一般的な解釈では、次のようなことを示します。
- 誰にとっても家族的な温かみを感じられるような社会の構築に人生の意味を見出す
成立しているアスペクト
今回の新月に対するアスペクトは次のとおりです。
- 新月・冥王星・ASC-Tスクエア
- 新月+MC・木星・海王星-グランドトライン(水)
なお、今回の新月は(日本では観測できないものの)部分日蝕でもあります。また、その発生位置は安部総理にとってネイタルの月のほぼ真上で発生することになり、心理面またはプライベート面において何らかの転機に繋がる出来事が発生することも考えられます。
補助要素
新月のはたらきをサポートする天体に焦点をあててみます。
水星
水星は♌獅子座・第10ハウスに位置しています。アスペクトは次のとおりです。
- 木星-スクエア
- 海王星-クィンカンクス
- ASC-セクスタイル
新月もMC上にありますし、水星も第10ハウス内ですので、この時期のニュースは政局の動きに関するものが多くなると考えられます。国会の会期は残り1週間前後で、この間に公職選挙法やIR法案の改正案などの成立をしたりするのでしょう。他方では、NHKがネット世帯に受信料を新設する動きなども本格化しているようです。
サッカーワールドカップも終わりますが、まだお祭り騒ぎの余韻に浸りたい方も多いと思いますので、意外とニュースやワイドショーのネタとして引っ張り続けられるかもしれません。あるいは代替ソースとして、芸能系のニュースを多用してくるでしょう。しかし、もしかすると国民全体の感情は、そのような動向にもやもやとした違和感を覚えるかもしれません。
火星
火星は♒水瓶座・第4ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 木星-スクエア
- 天王星-スクエア
皆様もご存じのとおり、国土環境は悲惨な状態です。先日起きた西日本の水害の映像を見るたび言葉を失います。同時に東日本大震災の頃と同様のトラブルや問題が繰り返し発生している様子であったり、ただひたすら人の感情を煽ろうとする報道の姿勢を見ていると、怒りばかりが溜まっていきます。とても個人的な話ですが。
ただ、こんなふうに怒りを蓄積しているのが自分だけではないのではないか?と、この火星によって思わされます。そして、怒りばかりでなく、「何とかしなくては」という焦りも大きく膨らみ続けているように思います。
木星
木星は♏蠍座・第1ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 木星・新月+MC・海王星-グランドトライン(水)
- 水星-スクエア
- 火星-スクエア
この第1ハウスにある木星は、先日までの楽しい話題の余韻にまだまだ浸っていたいという人々の心情と、大切な日常を失ってしまった人の怒りやフラストレーション、国の行く先に警鐘を鳴らし続ける人々や、そのような人々に反発する人などの、あらゆる主張や想いを吸い込んで膨れ上がるように見えます。これは、ごちゃまぜの世論が拡大する様子を意味するのでしょう。
土星
土星は♑山羊座・第3ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 土星・金星・天王星-グランドトライン(地)
実利重視で無駄を嫌う地のエレメントのグランドトラインが形成されます。今の国政を見るにあたり、当事者ではない多くの人の視点や見解を参考に、自らの見識のレベルを上げ、真実を語る情報を掴む力をしっかりと身につけるには良い時期なのかもしれません。
天王星
天王星は♉牡牛座・第7ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 天王星・金星・土星-グランドトライン(地)
- 火星-スクエア
- 海王星-セミスクエア
外交はどちらかといえばプッシュ型になるのかもしれません。自ら仕掛けていく というような。この時期は、適度に奇をてらったような交渉を展開できる可能性があります。ただ、国民感情とは衝突するような気配を感じます。現政権でプッシュ型の外交というと、たぶん膨大な資金を使うのでしょうから…。
海王星
海王星は♓魚座・第5ハウスにあります。アスペクトは次のとおりです。
- 海王星・新月+MC・木星-グランドトライン(水)
- 水星-クィンカンクス
- 天王星-セミスクエア
- 冥王星-セクスタイル
今のこの辛い時期に、エンターテイメントという慰めは必要であると思います。明日のことも思い描けない状態にある人にとって、それはまさに潤いです。
今回海王星は、目立ったハードアスペクトを持ちませんので、過剰に感情を翻弄するような働きにはならないのではないかと思います。
冥王星
冥王星は♑山羊座・IC上にあります。アスペクトは次のとおりです。
- 冥王星・新月+MC・ASC-Tスクエア
- 金星-セスキコードレート
- 海王星-セクスタイル
海王星とはうって変わって、こちらはハードアスペクトばかりが目立つ冥王星です。IC上に位置し、強烈な存在感を放っています。
国土と、そこに生きる多くの人々が受けたダメージは深刻です。考えてもみてください。とくに大震災以降、本当に毎年毎年大規模な災害が発生しており、日本中が何かしらの「被災地」となっています。雨・風・熱・雪・地震・雷・噴火。この数年に一体どれだけ発生しているでしょうか?
ICとほぼぴったり同じ位置にある冥王星。ICはまさに国土を表しますので、この配置は正直恐れを感じずにはいられません。また、日蝕ともほぼ正確にオポジションですから、本当に何かがリセットされるような事象が突然発生するかもしれません。
今このときを生きる人へ
今を生きる人々は、人生上の様々なシーンで無力感を抱えやすいと思います。しかし、この時期天が人々に語ろうとしているのは「たとえ黙っていることを選択しても、抗う気持ちを捨てないで」ということ。それから逆に、決して想いを持て余して腐らないでということ。その想いを心の奥深くで感じきって昇華させ、前を向くための力に変換させるべきだということ。そして、自らの殻を破ってその力を全力で表現したとき、それは多くの人々の心と共鳴し、人間としての親愛の念を通い合わせられる世界を求める潮流となるということです。