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人生の選択に隠された“本当の願い”に出会う時[回帰図編]

アイキャッチ:Biography 人生の選択に隠された本当の願いに出会う時[回帰図編]

占星術に日々向き合っていると、しばしば息を呑む瞬間を経験します。


研究を進めるうえで、最もベーシックなサンプルは自分の人格や人生。占星術師にとって自分というものは、現在と過去のあらゆる出来事を全て把握できるという貴重な研究対象に他なりません。

しかし、それは「自分にとってどんなに重く暗いエピソードであっても、真正面から向き合わざるを得ない」ということもまた意味しています。

今回の記事では、ある「回帰図(リターンチャート)」から、自分自身の過去の選択に隠されていた意味を知り、思わず涙が止まらなかったことについて書き留めておこうと思います。

写真:複数枚のホロスコープチャートと、火の灯ったキャンドル、星の形が連なった金のチェーン

回帰図(リターンチャート)をご存知ですか?

占星術で使用する「回帰図(リターンチャート)」をというものをご存知ですか?

図解:天体のリターン概念

占星術における「回帰(リターン)」とは、ある天体が「誕生時の黄経度数」まで戻ってくることを指します。

その瞬間をホロスコープチャートに描き表したのが「回帰図(リターンチャート)」です。

参考になりそうな関連ページ

1.占星術的なテクニックを知りたい方へ

先日、リターンチャートの技法の概要をまとめた記事を書きました。占星術的なテクニックを知りたいという方は、次のリンク先ページを参考になさってください。

2.リターンチャートを作成してみたい方へ

占星術のツールをお持ちでない方や、お持ちのツールではリターンチャートが作成できないという方に向けて「Astro-Seek.com」というサイトでの作成方法をまとめた記事を書きました。

リターンチャート作成方法の参考にしてみてください。

今回の記事を書こうと思ったきっかけ

イメージ:太陽系の天体たち

リターンというと、誕生日前後にやってくる太陽回帰(ソーラーリターン)がよく知られていますが、先のチャプターで紹介した記事にもあるとおり、他のどんな天体にもある現象です。

私にも今年の水星・金星のリターンが立て続けにあり、さらにこの記事を書き始める数日前「ああ、そういえば今年はもうすぐ火星のリターンもやってくるのか」と気づきました。それをきっかけに色々な天体のリターンチャートについて調べ始め、あれこれ作成して見ていたのですが…

その中のひとつに、私の人生初期の重要な選択の意味を暗示しているものを見つけたのです。

そのチャートは、12歳になる数ヶ月前に起こる木星のリターンを示した図「木星回帰図(ジュピターリターンチャート)」でした。

木星回帰図(ジュピターリターンチャート)が持つ意味

書き進める前に、まずは「木星」と「木星回帰図(ジュピターリターンチャート)」の意味を簡単にお伝えします。

木星そのものの意味

写真:宇宙空間の中で、人工衛星から木星を臨む様子。その先には遠く太陽が輝いている

占星術における木星は、単純に表現するならば「恩恵を示す星」です。

現代の西洋占星術の中でも、より人間の人格や心理にフォーカスする心理占星術においては「理念」に代表されるような善性に基づく発展的精神や「度量」つまり許容力(キャパシティ)を意味すると捉えます。

当サイトにも、木星そのものの意味をまとめたページがありますので、気になる方は参考にしてください。

木星回帰(ジュピターリターン)とは

ジュピターリターンとは、文字通り「木星が誕生時の黄経度数に帰ってくる」時のことです。

サンプルイメージ:ネイタルチャート(内側)の木星に、トランジットチャート(最も外側)の木星がコンジャンクションしている様子

木星だけを抽出した参考イメージを添付します。ホロスコープチャート上では、こんなふうになっています。

内側にある出生図(ネイタルチャート)の木星と同じ位置に、外側にある経過図(トランジットチャート)の木星がやってきて、完全なコンジャンクションの状態になります。

木星回帰図(ジュピターリターンチャート)が示すこと

前のチャプターでご紹介したリターンチャートの解説ページにも記載しましたが、概ね次のように捉えてください。

意味
将来の展望や可能性を拡げるために取り組むこと
希望を見出そうとすること
有効期間
約12年
(=次のリターンが起こるまでの期間)

次のリターンまでの約12年間が、その人の人生展望や可能性の拡大、人生発展の希望のためにどんな意味を持つのか、どんなテーマに取り組むのかを示します。

リターンの瞬間に起こる出来事を示すものというよりは、その期間を貫く1つの象徴的なテーマを理解することができるものです。

過去のチャートからわかること

イメージ:タイムトラベル 広げた手からたくさんの時計のイメージが空に向かって浮いている

過去のチャートからは、過ぎ去ったその期間が何のためのものだったのか?がわかります。そしてそれが今の自分を導いてくれたのだという確かな実感を得られるでしょう。

人によっては、運命への感謝を感じたり、過去の自分を労う想いが湧いてくるかもしれません。

未来のチャートからわかること

未来のチャートでは、これからやってくる12年で取り組むべき長期的なテーマが何なのか?をあらかじめ予感し、心づもりをしておくことができます。

これから先の時間で経験するあらゆる出来事が新たな未来を切り拓くのだ、という希望の種火を拾い上げることができるでしょう。

私の12歳ごろのジュピターリターンとエピソード

ここからは、今回サンプルとして取り上げる「私の12歳ごろのジュピターリターン」と、それにまつわるエピソードを書いていきます。

参考:このときのジュピターリターンについて

サンプルイメージ:ネイタルチャート(内側)の木星に、トランジットチャート(最も外側)の木星がコンジャンクションしている様子

対象期間中に、出生図(ネイタルチャート)の木星に対して、経過図(トランジットチャート=その時の実際の天空)の木星がコンジャンクションした回数や日時、当時の私の年齢について情報をまとめておきます。

コンジャンクション回数
3回 ※逆行を含む期間であったため
日時・当時の年齢
1. 1992年11月30日(11歳)
2. 1993年4月1日(12歳)
3. 1993年7月30日(12歳)

ジュピターリターンは、概ねどんな人も似通った年齢で迎えます。つまり、今この記事をお読みのあなたも、この年齢あたりでジュピターリターンを迎えている ということです。

実際のできごと

1回目のコンジャンクション

最初のコンジャンクションが発生した当時は11歳、早生まれである私は小学6年生でした。11月末なので、あと数ヶ月で卒業というくらいですね。

具体的に何をしていたかあまり覚えていないのですが、この年の文化系行事は展覧会だったような…?超厳しくも愛ある担任の先生にいろいろしごかれながら絵を描いて、出来上がったものが結構いい位置に展示されたとか、そんな感じだったような気がします。

記憶を引っ張り出せるかな?と思ってちょっとがんばってみましたが…あとのことはほとんど思い出せませんでした。もし今後思い出せたら、修正を入れるかも。

2回目のコンジャンクション

逆行期間に当たったために発生した2回目のコンジャンクションは、4月1日と分かりやすすぎる日付ですね。中学校の入学式直前くらいの時期。

3回目のコンジャンクション

その後、順行に戻った後の3回目のコンジャンクションは7月30日。夏休み中。

もともと極めて病弱な上に頭ばかり回り、そのクセほとんど遠慮せずにモノを言うタイプだった当時の私に陽気さみたいなものはなく、友達をたくさん作って皆と仲良くやれるタイプでもありませんでした。しかし、はっきりとは覚えてはいないものの、もしかすると部活の入部直前か直後くらいの時期だったのかもしれません。何故入ろうと思ったのか当時の動機を覚えていませんが、同じクラスや学年の子達が誘ってくれたからだったかな…?と思います。

卓球部か合唱部か迷った末に、合唱部に入りました。「卓球部で身体を少し強くできるかもしれない」と考えたものの、やはり長期的についていける自信がなかったことと、もう一つ「道具を買うために親にお金を出させることになる」のを憚り、結局やめたのでした。どちらの理由に対しても、強い罪悪感が残ったことを覚えています。

最も象徴的な事件

しかし、この時期のジュピターリターンが示している本当のテーマは、3回目のコンジャンクションからおよそ半年後に起きた出来事に、最も象徴的に現れました。


それは1994年1月末。3学期の最中で、もう少しすると誕生日というくらいの時期でした。

あれは確か夜の結構遅い時間…母に呼ばれて話を聞くことになりました。その内容は「家に巨額の負債がある」というもの。しかもそれが結婚後の家族関係の中でほぼ強制的に、そして本人の全く預かり知らぬところで負わされたものであるということでした。

私は4人兄弟の長子で、下には3人います。当時、すぐ下の2人は小学生、一番下の子はまだ2歳。みんな寝た後で私だけ呼ばれて話を聞いた形だったとぼんやり記憶しています。21時とか22時とかそれくらいの時間帯だったような。ひょっとするといつの間にか日付が変わっていたかもしれない。

さて、この話をしてきた母の思惑は、端的に言うと「公立高校に行ってほしい」というものだったわけです。しかし、私はその話を聞いた瞬間、全く違うことを考えました。

「学校なんて行ってる場合じゃない」と。

写真:母親と口論し手で顔を覆っている少女

「家がそんな状態で、まだ下に3人もいる。だったら長子である私は最も早く働きに出られるようになるんだから、一刻も早く働きに出ればいい。何ができるのか今はわかんないけど、少なくとも生活維持や返済、下の子達の進学などを実現するにはそれしかない。
高校に行ったとしたら、卒業は5年後。ましてや大学まで通うとすると、最後の卒業は9年後。
長すぎる。ありえない。その時期を待っている余裕なんかない。」

確か私はその場で母に向かって、こんな感じの発言をしたような気がします。

母は「お金はなんとかするのでせめて高校だけは出てほしい」と言いましたが、瞬間的に決まった私の意識が変わることは、中学卒業後に参加した高校の入学説明会の日までありませんでした。

この直後から、学業面で顕著な変化があらわれました。それまでの成績は(体育以外は)わりと上位に位置していたのですが、一気に下位20%あたりまで落ちました。最も下落幅が凄まじかったのは数学で、次に英語だったと思います。この2教科がほぼわからなくなってしまい、その後も元のように回復することはありませんでした。

余談ですが、この「中学1年生の時を境に数学と英語の授業内容がほとんどわからなくなった」のが、この事件の心理的ショックが原因であることは、近年ようやく自覚できました。それを気づかせてくださったのは以前の職場の方で、今でもとても感謝しています。

自分の中で学業に取り組む意味を完全に見失った私は、その後も頑なに高校受験を拒みました。しかし、最終的に母の懇願により受験。成績が落ちすぎた結果、内申点不足で公立高校へは合格できず、私立に行くことに。

入試に受かった私立高校では内申点はあまり関係がなかったのか、今度は成績上位すぎると判定され、先生方に猛プッシュされて(商業科希望だったはずが)進学コースに。その後、2年生からは学年に1クラスのみの特進コースに編入されました。しかし、やはり自分にとっての進学の意味を見出せず、単位のために必須だった1年時以外は部活もせず、学校側に家庭の事情を話した上でアルバイト許可申請を出し、受理された後はほとんどバイトに明け暮れていました。

2年生の頃からは土日も含めてほぼ毎日バイトをしており、収入は自分の学費・教材等費・交通費・昼食代・通信費などの必要経費に全てあてていました。当時は家に入れられるほどの金額はなかったです。胃腸をこわして入院したり、たびたび怪我で故障して、しばらく松葉杖生活だった記憶もあります。先生方はいつも心配してくださっていて、暖かく声をかけていただいたり、たびたび話を聞いてくださいました。見守られていたなあ…と思っています。

卒業後は「授業料を払わなくて良い」「技術を身につけて就職を目指す」「どうせなら自分もある程度楽しめそうな分野にしたい」という理由で選択・受験した職業訓練校(グラフィックデザイン科:2年課程)に一旦進みました。そしてここでも訓練校側に申請を出して、学習とバイトの日々。朝から夕方まで授業を受け、終わったらその足でバイトに行き日付が変わる前くらいまで働き、深夜に課題をやるという生活をしていました。土日もバイトと課題。この頃の収入は、自費負担の必要があった画材や教材、通信費等の自己経費以外はほぼ全て家に入れていました。

しかし高校生の頃以上に身体の故障が増え、半年で心身に限界が来てしまって結局退校。その後は…といった感じでさらに人生は流転していくことになります。


これより先のエピソードは、また別の機会に。だいぶ長く書いてしまいましたね。

そんなわけで、11〜12歳時のジュピターリターンにおいて最も象徴的なのは、やはり自分のその後の生き方を決定づけているこの事件に他ならないと思うのです。

検証:最重要事件とリターンチャートの関連性

リターンチャートそのものから、対象天体がどのハウスに入るのか?によって、その期間のテーマを読み取れます。過去の出来事の流れを振り返ると、実によく結びついていると感じられます。

そこで、このセクションでは、先のセクションで書いたエピソードを占星術の技法・技術の面から検証してみます。

占星術がわからない方は、前半部分は(とても長いので)読み飛ばしていただき、「すべての意味を統合してみる」あたりからお読みいただくと良いかと思います。興味がある方は、このまま読み進めても大丈夫です。占星術の知識がない方でも概要をつかめるように書いています。

当該リターン期間中の木星が入るハウスの変遷

まずはじめに、当該リターンチャートにおいて、今回の対象天体である木星がどのハウスに入っているのかをチェックしてみます。

当該リターン期間中は、合計3回のコンジャンクションが発生しています。それぞれのトランジットチャート単体で木星が入っているハウスの変遷を見ると…

  1. 第9ハウス(MCともコンジャンクション)
  2. 第12ハウス
  3. 第6ハウス

となっています。

逆行期間を挟んでいる時のテーマの変化とストーリー

当該リターンのように、逆行があってコンジャンクションが複数回発生する場合は、最終的に木星が示すテーマを選択するまでのストーリーを見ることができます。

  1. もとの願望
  2. 軌道修正の理由
  3. 軌道修正後の選択

このような流れが、象徴的にあらわれます。

当該リターン期間の場合

最初のコンジャンクション発生から最重要事件までの流れを見ると…

1. もとの願望
[第9ハウス(MCともコンジャンクション)]
将来に向かって進む。とくに学問・精神的成長と社会的活躍の一致を目指したい
2. 軌道修正の理由
[第12ハウス]
不可抗力、自己犠牲、社会からの隔絶
3. 軌道修正後の選択
[第6ハウス]
労働、役割を果たす、生活維持

となります。これは当時のストーリーとよく一致しています。

3重円から見る:人生にとっての意味

次に、自分の出生図(ネイタルチャート)の外側にリターンチャートを配置。そしてリターンチャートの日時情報を使用して、個性の成長を示す進行図(プログレスチャート)を中間に挟み、3重円を作成します。

その人の人生にとって重要度が高いエピソードがある時期のチャートには、とにかく色々なアスペクトが「同時に」そして「たくさん」成立していることが多いです。

今回取り上げたジュピターリターンの時期も、3重円で見てみると正にそうでした。3つとも重要なアスペクトが目白押しな状態ですが、ここでは1回目のコンジャンクション時、3回目のコンジャンクション時を取り上げ、それぞれのポイントをピックアップしてみます。

ここからどんな「人生にとっての意味」が見えるのか?

1回目のコンジャンクションの時(もとの願望)

リターン時のトランジットチャートでは、木星は第9ハウスに入り、MCともコンジャンクションしていました。
将来に向かって進み、とくに学問・精神的成長と社会的活躍の一致を目指したいという願望が、自分自身にとってどんな意味を持っていたのかを紐解きます。

サンプルチャート:木星回帰図199321130_3重円
1回目:NPT3重円
ポイント1

ドラゴンヘッド・ドラゴンテイルの関わり

  • 外側:トランジットチャートのドラゴンヘッドが
    • 外側:トランジットチャートのASCとコンジャンクション
    • 中間:プログレスチャートのグレートコンジャンクションに対して、ドラゴンテイルも合わせたノード軸として調停
  • 中間:プログレスチャートのドラゴンヘッドが
    • 外側:トランジットチャートのカイロンとコンジャンクション
    • 外側:ドラゴンテイルも合わせたノード軸として、トランジットチャートの水星・冥王星とTスクエア
    • 中間:プログレスチャートのグレートコンジャンクションとセミスクエア
  • 内側:ネイタルチャートのドラゴンヘッドが
    • 中間:プログレスチャートの天王星とトライン / ネイタルチャートのグレートコンジャンクション + ドラゴンテイルとともにクレイドル

「ポイント1」の関わりは、種類も多く、強いものがたくさんあります。ドラゴンヘッド・ドラゴンテイルは魂レベルの潜在的願望に関係するため、普段意識の届かない精神領域での意味づけ・人格および霊的な成長の動機を埋め込まれているようなイメージになります。

ポイント2

「夢」を示す海王星の関わり

  • 内側:ネイタルチャートの海王星が
    • 外側:トランジットチャートのASCとコンジャンクション(かつ、このASCのルーラーが木星)
    • 外側:トランジットチャートのカイロンとトライン + ネイタルチャートの冥王星とともにミニトライン
  • 外側:トランジットチャートの海王星が
    • 中間:プログレスチャートのASCとスクエア
    • 中間:プログレスチャートの月とクィンカンクス

願望というキーワードの元で「夢」を示す海王星がある程度目立っています。とくにトランジットチャートのASCと誤差なくコンジャンクションが成立し、そこにドラゴンヘッドも一緒についているという点が特徴的です。

ポイント3

「価値」を示す金星との関わり

  • 内側:ネイタルチャートの金星が
    • 中間:プログレスチャートの月・ASCと調停
    • 外側:トランジットチャートの月・土星とコンジャンクション
  • 中間:プログレスチャートの金星が
    • 外側:トランジットチャートの火星とクィンカンクス
  • 外側:トランジットチャートの金星が
    • 中間:プログレスチャートの火星とセクスタイル

「価値」とともに美意識や喜びを示す金星は、やや複雑な様相です。理想的な未来を欲する願望も見えますが、そこに対する不安や抑圧、迷いの存在も感じられます。


ここでのまとめ

自分の中でまだ目覚め切っていない魂の持つ潜在的願望と、顕在意識でも認識できる現世的な願望の一致点を探し求めていると考えられます。

3回目のコンジャンクションの時(軌道修正後の選択)

リターン時のトランジットチャートでは、木星は第6ハウスに入っていました。不可抗力的な状況の中で労働、役割を果たすこと、生活維持などを目的とする行動を選択したことが、自分自身にとってどんな意味を持っていたのか紐解きます。

サンプルチャート:木星回帰図19930730_3重円
3回目:NPT3重円
ポイント1

次の要素がすべて同じ位置(28°♒️)に揃っている

  • 内側:ネイタルチャートの太陽
  • 中間:プログレスチャート(ソーラーアーク法)の金星
  • 外側:トランジットチャートの土星

アイデンティティや人生の主目的を示すネイタルチャートの太陽、人生経験の中で成長してきた美意識や価値観、喜びなどを示すプログレスチャートの金星、それらに強いプレッシャーを与え、厳しい制限の中で人格を鍛え、責任者としての器を育てようとするトランジットチャートの土星 という組み合わせです。

ポイント2

本人が確立するライフパスのベクトルを示すネイタルチャートのMC(2°♑️)に、イベントトリガーとなるトランジットチャートの月がコンジャンクション

トランジットチャートの月は、イベントトリガーになると言われます。この事件がネイタルチャートのMCに対するトリガーであるならば、遠い将来の確立のために与えられた重要なクエストであると言えるでしょう。

ポイント3

ネイタルチャートの月とドラゴンヘッドの中間点に当たるミッドポイント(7°♌️)に、トランジットチャートの太陽がコンジャンクション

月とドラゴンヘッドのミッドポイントは、本人の持つ純真性と、生涯をかけて叶えようとする潜在的願望との接点を意味しており、そこに外側の太陽が創造の息吹を埋め込んでいると解釈できます。

ポイント4

「根底の意志」を示す冥王星との関わり

  • 内側:ネイタルチャートの冥王星が
    • 中間:プログレスチャートのノード軸を調停
  • 中間:プログレスチャートの冥王星が
    • 外側:トランジットチャートの太陽・ASCとTスクエア
  • 外側:トランジットチャートの冥王星が
    • 中間:プログレスチャートのノード軸とTスクエア

外側・中間のチャートではとても厳しいアスペクト構成で、これから先の人生展開が全く平穏ではないことを示していますが、内側のネイタルチャートの冥王星は、遠い将来に自分の潜在的願望が達成されるよう、心の根本を支えるための深い意志を示しているようにも見えます。

ここでのまとめ

自己の主体性や喜びを一旦殺し、役割に徹する生き方を選択しつつも、いつかそこから抜け出せたり、あるいはそれが終わった時に再び自己を生き直すことができるように、困難に耐え、実力をつけるための挑戦をしているように見えます。

すべての意味を統合してみる

潜在的願望の成就のために、いつ来るともわからない将来の機会に向けて力をつける目的で、自分にはどうしようもない状況の改善のために、自分を捨てて働く生き方を自ら選択した。


これが、当時のジュピターリターンの意味するところでした。

人生の選択と無意識

ここまで書き進めてきたように、当該リターンの時期付近に起こった事件をきっかけにして当時の私は「家族のために自分の意思や願望を犠牲にする」という生き方を選択しました。生きることに失望していたのはもっと小さい時からでしたが、当該事件をとおして、そのスタンスがより決定的になりました。

しかし、その選択の奥底には、いつだかわからない将来の時の中で、再び自分の魂が持つ願望を叶える機会を迎えようとする希望をひっそりと埋め込んでいたのです。自分にすら悟られないように。それを実行したのは他でもない無意識の自分。


意識で自覚できる部分では、当然ながら深い失望が残りました。そのためか、思い返してみると、小学生の頃に主に心にあったのは「一刻も早くこの環境を脱出したい」という気持ちだったと思うのですが、この事件あたりから明確に「死にたい」に変わっていたと思います。いわゆる希死念慮というものですね。

「どうやったら完全に1人で死後誰にも発見されることなく、原子レベルで、人々の記憶からも消え去るように死ねるのか?」

長年あらゆる時に、あらゆる場面で考えていました。どう考えても現実的には無理ですし、自分でもそれは理論的に理解していましたが、ある意味そういう狂ったことを「考え続ける」人間だったために、むしろ私は生きたのかもしれません。そして、気持ちが堕ち切りそうになると「『死にたいという気持ち』に負けることが何より無様だ。死んだら負けだ」という気持ちが必ず出てきて、自分を止めていました。

1日1日の中ですらどれだけ繰り返したかわからないこの無限ループを、少なくとも30代に入ったあたりまでは、自分の中で延々と続けていました。

補足:希死念慮について

希死念慮というものは、一旦それが出現する心理状態になると、そう簡単に消えることはありません。

写真:暗く閉ざされた部屋の中で1人佇む少女のシルエット

例えとして「本来であれば草原のような環境に生える樹木」をイメージしてみてください。その樹木が根差した土壌が砂になり、極限の暑さと寒さの転換を繰り返す砂漠のような極限的環境に長くさらされ続けた様子をイメージするといいかなと思います。

  • 一時的に水や養分を与えても、すでに痩せすぎて乾き切った身体には気休めにしかなりません。それを吸い上げる力が残っているかどうかも心配です。人間でも、食事や水分を長く摂れない状態が続くと、飲食行為がなかなかできず、栄養も水分も吸収できなくなるものです。
  • 土壌や気候の環境を変えるには、膨大な時間とプロセスが必要です。そのため、もし働きかける場合は相当の決心・覚悟を必要とします。働きかける側に相当な心身の力が求められるのです。生半可な関わりは、一言で言えば無駄に終わります。
  • 今生きる望みを奪われている状況だとしても、樹木(=本人)の生きる意志が残っていることが絶対的に必要です。生命体は本来等しく「生きたい」という生存本能を持ちますが、それを人間特有の誤解で捉えないようにすることが大切です。
    • 本人側:「生きたい」を叶える方法が自らの世界の中に一つも見出せなくなったときに、その想いは「死にたい」に覆い尽くされます。しかし、その根源の願いが「生きたい」であることを、本人はどこかで気づく必要があります。
    • 本人以外側:本人の「生きたい」を直接掘り起こし、触れることができるのは本人だけだということをよく理解する必要があります。それは本人の生命の秘宝であり、他人が勝手に触れて良いものではないからです。本人以外の人間ができることは、その力を取り戻せるように養ったり、本人が自養できるよう支えること。物事や心情への深い理解力と包容力、感情に振り回されない冷静な判断力、心理的距離感を測り間違えないセンス、依存と信頼を切り分けた上で信頼を育てるスキルなども必要になり、人間力の練度がとてもシビアに問われます。

私の場合、自分の希死念慮が完全になくなるまでには少なくとも20年ほどかかりました。

振り返って思うこと

私は当該事件の前後も含めて長年、意識的にも無意識的にもほとんど常に自己犠牲的な物事の選択の仕方をしてきました。それは「自分の望んだものやことをことごとく棄てる」という生き方で、全く建設的ではありません。良くて「本当に望んでいることの手前」までしか手を伸ばすことをせず、それを自己の幸福の代用品とみなし続けてきました。

「本当に望んでいることはそもそも手に入ることはない。だからその代わりで満足するしかない。」

簡単に言うと、こんな考え方です。こういったものを「呪い」と言います。

でもひょっとすると、こういった考え方を持っている方は、この社会の中には少なくないかもしれません。それぞれが抱える背景事情は違っても。

何年もかけて少しずつ修正してきてはいますが、今もまだ時々しています。今年に入ってさえ、未だにそういった選択をしている自分を発見したくらいです。なんて根深い…。

しかし、今回のジュピターリターンチャートの掘り下げによって、失望に染まった過去の自己選択にも、信じられないくらいポジティブな願いが埋め込まれ、隠されていたのだとわかりました。「仕方なく」という理由での当時の選択が、潜在的願望にまで結びついているものだとは全く思っていなかったので、私にとってはあまりに衝撃的だったのです。

そして、その衝撃によって思わず涙が出はじめて、止まらなくなりました。その日はもう寝る前だったのですが、結構ダイナミックに泣き腫らした顔のままで寝ることになってしまいましたね…。

あとがき

人は誰しもそれぞれの人生の中で、辛い経験をすることがあります。その身に起こる事象の形は千差万別ですが「その人にとっては心が折れる出来事」。それは共通です。しかし、なぜその時その出来事によって心が折れたのか?という理由は、本人だけのもの。だから時折、心の折れた人に向かって「そんなことくらいで」という言葉を反射的に吐いてしまう人がいます。その人には、その事象によって心が折れるほどの理由が存在しないからです。


私は、今回取り上げた当該事件から2年弱後が経過した14歳の時、書店で1冊の専門書と出会い、占星術の世界の扉を開きました。それ以前 ── まだ年齢が2桁に達しない頃 ── にも一度小さな出会いを経験していたのですが、実際に学び始めたのはこの時からです。普段自分のために何かを買うことをしていなかった私でしたが、ほとんど迷わずその本を買って帰り、帰宅してそのままページをめくり始めました。

白い紙に印刷されたチャートの上に、細いピンがいくつも転がっている

基礎知識と技法を1人で学びながら、高校受験のための勉強もそっちのけで、ひたすら自分のネイタルチャートに向かいました。そのことで、自分の人格や資質、運命のアウトラインを理解でき、これが私にとって生涯大切な心の支えになりました。

同時に、この頃から私は、思いどおりにはあまりに程遠く、痛みの多い自分の人生であっても「自分の在り方や考え方、生きた中での経験が、いつか誰かの糧になればいい」と明確に思うようにもなりました。

その後20歳の時、現実を生きるため家出を経て失意のうちに離れた占星術だったのですが、紆余曲折の末、約15年後に再会しました。その時、それはもはや導きであるような気がして再びその世界に向き合おうと決め、月相のリーディングを開始したり、遠方で開かれるワークショップや講座に行ってみたりして、人生の方向性をシフトさせるための行動を具体的にはじめました。

「もしや…?」と思ってジュピターリターンのチャートリストを見直してみると、ちょうどその時期付近の日付のものがありました。

そのチャートを見てみると、木星が位置するハウスは第10ハウス、これはキャリアのハウスです。ASCは射手座、そこに土星のコンジャンクション。そうすると…これは、キャリアを打ち立てる決意と絶対達成のための行動が必要だと示しているのか…。

3重円のことは、文章量が無駄に増えるだけなのでもう書きません。「あっ…(察し)」といった感じでした。他のたくさんのチャートにも触れ続けたことで、ショック続きで今は若干心がへたっています…。


人間の目には決して見えない運命、心や魂の姿を見られる方法がいくつかあります。それは遥か太古に生きた先人たちによって生み出され、これまでの長い長い時代の流れを経て、辛くも滅びを免れながら現代まで命脈を保ってきた人類の秘技です。かつてまだ人類が神秘と繋がっていた頃の力を残し、私たちの一部でもあったその世界との絆を回復する可能性を秘めた、偉大なる智慧です。

目に見えるものだけを現実だと思うようになってしまった人々に対しても、時には戒めを、時には恵みを、時には信じられないような計らいを見せ、目で見えるものとは違う世界が今でも静かにそこに在るということを教えてくれるもの。それがオカルトです。

イメージ:オカルティックなツリー

今、伝えたいこと

私にとって占星術は、目に見えない運命や心、魂の姿を見るために自分が選んだ最高の方法です。その占星術を通じて今、伝えたいことは

「自分と人生を諦めなくていい。どうか自分を取り戻し、生きてほしい」

ということです。


今まで私は、このような思いをこんなにストレートに何かの媒体に書くことはしてきませんでした。

一言に凝縮すれば「誰かの心を救いたい」というメッセージ。けれどそう言葉にすると実に安っぽく、中身がない。偽善的で戯言のように聞こえるし、他人にそういった印象を持たれることも嫌でした。だから、これは自分の中に秘めておけばよく、ましてや明言化など恥。もってのほかだと思っていました。そして、間違ってもそんな言葉を発しないよう隠し続けるうちに、自分の意識の上に取り出すことすらできなくなってしまっていました。

けれど、これ以上隠していてもしょうがないのだと、今回の記事を書き進める中で悟りました。どれだけ探し回っても、この想いを表現する他の形は見つかりませんでしたから。そして、どんな方向から探っても、この想いに辿り着く度に、涙しか出てこなかったのですから。


イメージ:波立つ海岸に、こちらに背を向けて立つ白いドレスの女性

あなたが出会うすべての世界、あなたが出会うすべての出来事は「運命」によって導かれます。運命は、動かぬ大地のような宿命という土台によって支えられているものですが、自他のはたらきかけによって動きます。しかし、思いどおりに動かせるのは、他者からのそれではなく、自らのはたらきかけだけ。そんな「自分で動かすことができる風」のような運命の力を使って、人はその時生きている人生において、自らの魂が持つ願望を達成しようとしているのでしょう。たとえそこに自覚などなくても。

1人の人が持つ人格や魂、運命の物語は、実はとても壮大なものです。その全貌すべてを一瞬で読み解ける術など存在せず、またそれを一言で表現できる完璧な言葉もありません。それは神の芸術みわざであって人間の技ではありません。ですから、仮にそれができるという人物がいるならば、それは神からの信託を受けたよほど特別な者でない限り、神を冒涜する者か、その人が人間ではないかのどちらかです。

人間如きにできることなど、限られているのです。そして、そんな人間である1人の占者がその時々で読み解けることも、もちろん限られています。

それに、全貌を一瞬で読み解くことには意味がありません。仮に運命が全て決まっているものだとすれば、運命の全てを知ることは、すなわち死するのと同じです。すでに決まっているということは「生きていても自分では何も変えられない」ということを意味するからです。

また、身分や階級によって建っていた社会が終わった後の現代では、生きることの選択肢が無限に広がりました。そんな中で、占星術のシンボルたちが管轄する要素の量・範囲も膨大に膨れ上がることになり、導き出すべき解釈を「○○になる」とか「○○が起こる」などという具体的な事象だけに絞る狭い時代もまた終わったのだと、現代の先人たちはそれこそ肌で感じたのではないでしょうか。モダン占星術やそこから分岐している心理占星術は、そうした経緯の中で生まれ、成長してきたのだろうと私は想像しています。

それでいいのだろうと思います。
自由とは「自ら由らしむ」こと。そういうことなのだと思うのです。

民衆の拠り所であった社会は、民衆の檻でもありました。それがなくなるということは、これから先の時代では、人は民衆であることをやめ、自らの意志によって「人間として」立たなければならないのです。


あなたにとって、それが起こった当時は辛くてどうしようもなかったこと。理不尽の最たるものだった出来事。世界に失望させられたこと。呪いの起源になったこと。

それはあなたの人生の全てのために、何か重要な意味を秘めたことだったのかもしれません。

けれど…

あなたが、ふと「立ちあがろう」と思う時。
あるいは、今まさに立ち上がったという時。

あなたが「今いるこの場所から脱出しよう」と思う時。
あるいは「自分の場所を見つけたい」と思う時。

あなたが、自己を突き破ろうとする衝動を感じた時。
何かの封印を解きたい時。
自分の呼び声を聞きたい時。

それは、過去の傷や、今なお続く呪いに閉じ込められている「本当の意味」に向き合う時がやってきたというサインではないかと、私は思います。

その時、占星術や、私が、何かの役に立てることがあると思います。

写真:光る天球儀をみつめる子ども

その人の本質を理解し、その確立と解放へと導くこと。
その人の真の願望を見つけ、それを意識の世界の下に引き出すこと。
暗闇の世界に、誰もが思わぬ方向から光と風を差し込むこと。
その人の封印を解くこと。

それが、私の占星術です。

それを通して、自らの意志によって立ち、自由に生きる人を、この世界の中に1人でも多く送り出すこと。

それが、私が占星術で成し遂げたいことです。

イメージ:光に満ちた空に向かって手を拡げ、鳥たちを解放している女性

もし、あなたにとって必要な時が来たら、いつでもお声をかけてください。

その時に必要な準備をして、お待ちしております。


今回、自分のリターンチャートをたくさん、そして時間をかけて見つめ直してみたことは、本当に有意義でした。これが必要だったのだなと実感しています。

技術的なことも書きましたが、それ以上にメッセージを詰め込んだ気がします。ちょうどマーズリターンのタイミング(4/2 13時くらい)から書き始めて、4日後の今ようやく仕上がりました。

この大変に長い記事を最後までお読みくださり、本当にありがとうございました。

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